人工股関節置換術/人工関節センター
人工股関節置換術とは
股関節は身体の中の最も大きな関節で、体重を支えています。健康な股関節では、ねじったり、大きく動かしてもはずれたりせず、安定しているので、痛みなく歩いたり、しゃがんだりできるのです。しかし股関節に問題が生じると、動くと痛むようになり、ひどい場合にはただ立っているだけで痛むようにもなります。
正常な股関節
股関節はふともも(大腿骨)の上端、丸くなっている骨頭が骨盤のくぼみ(寛骨臼)にはまりこむようになって関節を形成しています。関節の表面はなめらかな軟骨におおわれており、大きな関節によって自在に動かすことができます。
正常な股関節
人工股関節置換術
1960年代より、人工股関節置換術は世界的に広く行われる手術になりました。
人工股関節置換術は、変形性股関節症、大腿骨頭壊死症、関節リウマチなどの疾患による股関節の障害の治療に行われ、世界中で年間およそ50万件行われています。
人工股関節は特殊な金属、ポリエチレン、セラミックなどで作られています。大腿骨側と骨頭、寛骨臼側の部品が組み合わさって人工関節を構成します。
人工関節を骨に固定する方法には、セメントを用いる方法と用いない方法があります。症例により使い分けをします。人工股関節は、大切に用いれば長い耐久性(およそ15年から20年)があります。耐久年数を過ぎた人工関節は取り替えることもできます。
人工股関節の効果
- 痛みがなくなります(大きく和らぎます)。
- 日常生活の動作や運動がずっと楽にできるようになります。
- 活動範囲が拡がることで、下肢の筋力がついてきます。
- 他の関節への負担がかるくなります。
症例:亜脱臼性股関節症による変形性股関節症
術前 |
術後 |
人工関節置換術の問題点
股関節の痛みが劇的に改善する人工股関節置換術ですが、問題点はあります。こうした点を理解した上で術後日常生活においても上手につきあうことが必要となります。
- 脱臼:人工関節がはずれること。整復(元にもどす)しますが、頻回に起これば再手術となります。
- 細菌感染:人工関節は大きな異物であるため、細菌感染が起こりやすい環境です。感染すると赤みや腫れ、膿が出て治りにくく、人工関節を抜去しなければならない場合があり、治療期間が長くなります。日頃より細菌感染のもとになりやすい虫歯や水虫の治療、ウイルス性の病気にかからないなど常日頃からの注意が必要です。当院では手術はクリーンルームで行います。
クリーンルーム
- ゆるみ、摩耗:時間が経過するにつれて、人工関節周囲の骨に隙間「ゆるみ」が発生することがあります。又、高密度ポリエチレンという人工軟骨が1年間に平均0.1mm摩耗します。このため骨溶解が起こり得ることがあります。従って定期的に人工関節の状態を確かめながら、メンテナンスを行っていくことで、寿命を延ばすことが上手な付き合い方です。